業種別ガイド

卸売業のAI活用、何から始めるか。
得意先は変えず、自社側だけ速くする。

朝いちばんにFAXの注文書がたまり、電話の注文をメモで受け、得意先ごとに違う単価を確かめながら受注入力。合間に「あれ、いつ入る?」の納期問い合わせが挟まり、月末は請求書の山——。このページでは、卸売業がAIをどこから使い始めると無理がないかを、得意先のやり方を一切変えさせない前提で整理します。

卸売業の仕事の流れと、事務が詰まる場所

卸の一日は受注で始まります。FAX、電話、メール、得意先によってはWeb発注。それを受注入力し、在庫を引き当て、出荷指示を出し、納品書を付けて出荷。月末には得意先ごとに締めて請求書を発行し、入金を照合します。並行して、仕入先への発注と、営業担当の得意先回り(御用聞き)が回っています。

この流れの特徴は、入口(受注)の形式が得意先ごとにバラバラで、しかも自社からは変えられないことです。長年の得意先に「FAXをやめてWebで発注してください」とは言いにくい。だからこそ、変えるのは自社側の処理だけ、という設計が卸のAI活用の基本になります。

時間を食っている場所はどこか

AIが効く場所ベスト4

売上を増やす系

1. 御用聞きの中身をAIが用意する。得意先ごとの注文履歴から、「そろそろ切れる頃の商品」「先月から注文が落ちている商品」「この得意先がまだ買っていない売れ筋」をAIが拾い出し、訪問前の営業メモにします。回る先は同じでも、持っていく話が変わります。注文の減少に気づくのが早くなることは、他社への切り替えの兆候を早くつかむことでもあります。

2. 在庫・納期回答を速くする。在庫と入荷予定を参照して回答文の下書きを即座に用意します。「すぐ答えてくれる問屋」であることは、それ自体が選ばれる理由になります。

手間を減らす系

3. FAX注文書の読み取り・入力補助。届いたFAXから品名・数量・希望納期をAIが読み取り、得意先別の単価を当てて受注候補の一覧にします。人は照合して確定するだけ。品番の打ち間違いによる誤出荷も減らせます。

4. 請求まわりの下処理。締め処理の前段にある突き合わせ——納品データと受注データの照合、請求書の宛先・締め日の確認——をAIと自動化で受け持ち、月末の山を低くします。

入口はバラバラのまま。読み取りと単価当てをAIが受け持つ FAX注文書 手書き・略称まじり 電話の注文メモ 録音から書き起こし メール注文 形式は先方まちまち AIが読み取り・整形 品名を品番に読み替え 受注候補の一覧を作成 得意先別 単価表 掛率・特価を自動で参照 人が照合・確定 原本と見比べて確定入力 出荷指示へ 得意先の注文方法はそのまま。変わるのは自社側の「読む・調べる・打ち直す」だけ
受注処理の流れ。読み取りと単価参照をAIに、確定は人に

卸売業ならではの注意点

単価の間違いは、他の業種の誤字とは重みが違います。得意先別の特価を間違えて請求すれば、信用問題になります。だからこそ、AIが単価を「決める」のではなく、棚卸しした単価表を「参照して候補を出す」だけにし、確定は必ず人が行う形を守ります。単価表の棚卸しは地味な作業ですが、ここを飛ばした自動化は事故のもとです。

また、在庫データの精度が低いうちは、納期回答の自動送信はしません。まず「AIが下書き、人が直して返す」から始めて、データの確からしさが上がった品目から自動化の範囲を広げます。

POINT 卸のAI活用は「受注入力の効率化」で止まりがちですが、同じ注文データは営業の武器になります。入力を自動化して終わりにせず、たまった注文履歴から「切れる頃・減っている・まだ買っていない」を拾う御用聞き支援まで進むと、手間削減と売上増の両方を一つの仕組みで取れます。

こんな会社に向いています / 向いていません

向いているFAX・電話の受注が毎日あり入力担当の朝が受注処理で埋まる/得意先別価格がExcelと担当者の記憶に分散している/納期問い合わせの折り返し電話が多い/営業が回る先は多いが訪問の中身が薄いと感じている
効果が限定的受注の大半がすでにEDIやWeb発注でデータ化されている/得意先が数社のみで受注・請求業務が少ない/改善したいのが倉庫内の作業そのもの(それは物流設備・レイアウトの領域が主です)

よくある質問

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