業種別ガイド
食品加工業のAI活用。
FAXの受注と記録の山に、何が効くか。
朝一番に届くFAX注文書の転記、現場でつける温度記録と製造日報、取引先から次々に届く規格書の依頼。食品加工業の事務は「同じことを何度も書き写す仕事」の比率が高い業種です。このページでは、受注入力・記録の記帳・規格書作成のどこにAIが効くのかを、向き不向きも含めて整理します。
食品加工業の1日は「転記」で埋まっていく
問屋やスーパーに納品している加工場の朝は、だいたい似た流れで始まります。FAXで注文書が届き、電話でも追加注文が入る。受注締め時間までに手書きの品番と数量を読み取って受注表に転記し、製造指示につなげる。製造が始まれば温度記録や作業記録をつけ、終われば製造日報。出荷前にはロット番号と賞味期限印字を確認し、伝票を起こして納品へ——。
この流れのなかで、人にしかできない判断はそれほど多くありません。時間を食っているのは、次のような「書き写す作業」です。
- FAX・電話受注の入力。手書きの数字を読み取り、聞き取り、受注表へ転記する。締め時間前に集中するので、急ぐほど間違えます。
- 記録の二度書き。現場ではメモや紙の帳票に書き、事務所でパソコンに清書する。同じ内容を二度書いています。
- 規格書・原材料一覧の作成。取引先ごとに様式が違い、同じ商品の同じ情報を何度も書き写す。転記のたびにミスの機会が増えます。
- 賞味期限・ロットの照合。製造記録と出荷伝票の突き合わせを、目視と指差しでやっている。
そして歳暮・中元・年末の繁忙期には、この転記量が一気に膨らみます。受注は増えても事務の人数は増えないので、毎年ここで残業が積み上がります。
AIが効く場所ベスト4
まず、日々の負担が大きい「手間を減らす系」から3つです。
1. FAX注文書・電話受注の入力を「確認するだけ」にする(手間を減らす系)
届いたFAX注文書をAIが読み取り、品番・数量・納品日を一覧の形に起こします。電話受注も、通話のメモや録音から注文内容を書き起こす使い方があります。人の仕事は、ゼロから打ち込むことではなく、画面に並んだ内容を元のFAXと見比べて確定することに変わります。読み間違いが起きうる前提で人の確認を挟むため、受注ミスを完全にゼロにする話ではありませんが、「急いで打ち込んで間違える」形のミスは減らしやすくなります。
2. 製造日報・温度記録の「清書」をなくす(手間を減らす系)
現場での記録そのものは、いまのやり方のままで構いません。変えるのは事務所での清書です。手書きの帳票をスマホで撮って読み取らせる、口頭で吹き込んだ内容を製造日報の形に整えさせる、といった方法で、「現場で一度・事務所でもう一度」の二度書きを一度にできます。記録は残っていること自体に意味がある業務なので、AIが整えた内容をそのまま確定せず、書いた本人か責任者が確認して締める流れにします。
3. 規格書・原材料一覧の下書きと転記チェック(手間を減らす系)
商品規格書や原材料一覧は、元になる情報は社内に一つなのに、取引先ごとの様式に合わせて何度も書き写しているのが実態です。自社の原材料や配合のデータを一か所にまとめておけば、AIに取引先様式への転記の下書きを作らせ、さらに元データと下書きの食い違いを洗い出すチェック役も任せられます。あくまで書き写しの補助であり、記載内容の正しさの最終確認は必ず人が行います。ここを機械任せにする提案はしません。
4. 歳暮・中元前の商品案内を仕込む(売上を増やす系)
繁忙期の受注は、待っていて来る分だけではありません。ギフト向け商品の案内状や商品資料のたたき台をAIに作らせておけば、普段は追加提案まで手が回らない問屋・スーパーの担当者にも、繁忙期の前に案内を届けられます。最近注文が減っている取引先を受注データから拾い出し、声かけの優先順位をつける使い方も、この延長にあります。
食品加工業ならではの注意点
食品を扱う現場では、記録や表示に関わる書類の扱いに、他の業種にはない慎重さが要ります。AIを入れるときも次の線引きを崩さないことが大事です。
- 記録類は「書く手間」だけを減らす。温度記録や製造記録は、あとから見返せる状態で残っていることに意味があります。AIが楽にするのは記帳と清書の手間であって、内容を確認して締める責任は人に残します。
- 原材料一覧・規格書はAIの下書きをそのまま出さない。AIは転記ミスを減らす道具として使い、提出前の最終確認は必ず人が行う運用にします。元データが古いままだと、AIは古い内容をきれいに書き写してしまいます。元データの管理場所を一つに決めることが先です。
- 賞味期限・ロットは「照合の補助役」として使う。製造記録と出荷伝票の突き合わせや抜け漏れの洗い出しはAIの得意分野ですが、出荷してよいかの判断は人の仕事です。人の目のダブルチェック役、という位置づけが現実的です。
向いている会社 / 効果が限定的な会社
| 向いている | FAX・電話の受注が毎日数件以上ある/温度記録や製造日報など決まった帳票を毎日つけている/規格書・原材料一覧の依頼が取引先から定期的に来る/歳暮・中元期に事務が破綻しかけた経験がある |
|---|---|
| 効果が限定的 | 受注が少数の取引先からのデータ連携のみで、紙のやりとりがほぼない/記録類がすでにシステム化されて二度書きがない/品目が少なく帳票の種類も転記量も小さい |
すでに受発注システムでつながっている会社では、受注入力より先に、規格書対応や記録の清書のほうが効く場合もあります。どこから手をつけるかは、いまの紙の量を見て決めるのが確実です。
よくある質問
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FAXの注文書は手書きが多いのですが、AIで読み取れますか?
手書きの読み取り精度は、注文書のレイアウトや字の状態によって差があります。そのため「AIが読み取り、人が画面で確認して確定する」流れを前提にします。確認の手間がいまの手入力より軽くなるかどうかは、実際の注文書を数枚見せていただければ見通しをお伝えできます。
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原材料一覧や商品規格書の作成をAIに任せて大丈夫ですか?
AIに任せるのは、自社の原材料データから取引先の様式へ書き写す「下書き」と、元データとの食い違いを見つける「転記チェック」までです。記載内容が正しいかどうかの最終確認は、必ず人が行う前提で仕組みを作ります。そのまま提出する使い方はおすすめしません。
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製造記録や温度記録の紙の帳票は、全部やめないといけませんか?
全部をやめる必要はありません。現場では紙や口頭のまま残し、事務所での清書・転記・集計の部分だけAIに置き換える、という分け方ができます。現場のやり方を変えずに二度書きだけをなくすのが、負担の少ない始め方です。
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賞味期限やロット番号の管理までAIでできますか?
AIが得意なのは、記録間の突き合わせや転記、抜け漏れの洗い出しといった「照合の作業」です。期限の付け方やロットの区切り方といったルールそのものの判断、出荷可否の最終判断は人が行う前提です。人の目のダブルチェック役として組み込むのが現実的です。
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歳暮・中元の繁忙期だけAIを使うことはできますか?
仕組み自体は繁忙期だけ使うこともできますが、導入した直後は確認や修正のやり方に慣れる時間が必要です。受注が数倍になる時期にいきなり始めると現場が混乱しやすいため、閑散期に普段の受注で慣らしておき、繁忙期に本領を発揮させる順番をおすすめしています。
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