疑問・比較ガイド
Excelマクロ資産とAI自動化、
どう付き合うか。
月末の集計はベテランが昔作ったマクロが一手に引き受けている。でも作った本人はもう退職していて、中身は誰も分からない——。AI活用を考え始めた会社ほど、この「マクロ資産」の扱いに迷います。このページでは、捨てる・残す・置き換えるをどう判断するかを整理します。結論を先に言えば、慌てて捨てる必要はありません。
動いているマクロは、急に捨てなくていい
「AIの時代にマクロはもう古い」という言い方を目にすることがありますが、これは半分しか正しくありません。両方の言い分を並べてみます。
マクロを残す側の言い分。いま動いているマクロは、長年の実務で例外処理まで磨かれた「枯れた資産」です。Excelさえあれば動き、追加の月額費用はかからず、データは社外に出ません。決まった形の集計・転記・帳票出力なら、今もマクロの方が速くて確実な場面は多くあります。
置き換えを勧める側の言い分。マクロは作った人に依存します。その人が辞めれば、Excelのバージョンアップやフォーマット変更で止まった瞬間に誰も直せません。またマクロはExcelの中でしか動けず、メールを読む・PDFを読み取る・文章を書くといった、いまAIが得意にしている仕事には手が届きません。
どちらも事実です。つまり問いは「マクロかAIか」ではなく、「どのマクロを残し、どれから手当てするか」に置き換えるのが現実的です。
本当の問題は「作った人がいない」マクロ
リスクの大きさを決めるのは、マクロの新旧ではなく「直せる人がいるか」です。まずは社内のマクロを棚卸しします。共有フォルダから拡張子が .xlsm のファイルを洗い出し、次の4点を一覧にするだけで十分です。
- 何の業務で使っているか(月次売上集計、請求書発行、在庫表の更新など)
- 作った人は今もいるか(在籍・退職・外注)
- 最後に手を入れたのはいつか
- 止まったら業務がどれくらい困るか(その日のうちに困る/月末だけ困る/実は誰も使っていない)
棚卸しをすると、たいてい「実はもう使っていないマクロ」と「止まったら月次が締まらないマクロ」が混ざって見つかります。守るべき対象がはっきりするだけでも、棚卸しの価値はあります。
AIでマクロの中身を解読する、という新しい選択肢
ここ数年で状況を変えたのがこの点です。マクロの中身(VBAというプログラム)をAIに読ませると、「このマクロは何をしているか」を日本語で説明させることができます。以前は、作った人がいないマクロの解析は専門業者に依頼するしかありませんでしたが、いまは社内で着手できる作業になりました。
つまり「作った人がいない=ブラックボックス」のまま置き換えを迫られるのではなく、まず解読して仕様書を残し、それから残すか置き換えるかを落ち着いて決める、という順番が取れるようになったのです。解読した内容を手順書として残しておけば、残す場合でも属人化リスクは大きく下がります。
ひとつ注意点があります。マクロのコードの中に、取引先名・単価表・共有パスワードなどが直接書き込まれていることは珍しくありません。AIに読ませる前に中身をざっと確認し、入力データを学習に使わない設定にしておく、といった情報の扱いは先に決めておきましょう。
置き換えるなら、どの順番か
棚卸しと解読が済んだら、置き換えの優先順位はおおむね次の基準で決められます。
| マクロを残してよい | 安定して動いている/中身が分かっている(または解読済み)/処理がExcelの中で完結している/決まった形のデータしか扱わない |
|---|---|
| 置き換えを検討 | 壊れたら直せない状態のまま基幹業務を支えている/メール・PDF・WebなどExcelの外とつなぎたい/文章作成や内容の判断など、手順化しきれない処理をさせたい/担当者がフォーマット変更のたびに手直ししている |
見落とされがちですが、「マクロの手前と後ろ」から手をつける方法もあります。マクロ本体はそのままに、マクロに食わせるデータの準備(メールからの転記、PDFの読み取り)や、マクロの出力を使った報告文の作成をAIに任せる形です。動いている資産を壊さずに、AIの得意な部分だけ足せます。
よくある質問
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マクロはもう古い技術なのでしょうか?
古い技術であることと、使えない技術であることは別です。ExcelマクロはExcelがあれば動き、追加費用もかからず、社内で完結します。決まった形の集計や転記では今も十分に実用的です。「古いから」だけを理由に置き換える必要はありません。
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作った人が退職して、誰も中身が分からないマクロがあります。
まさにAIが助けになる場面です。マクロのコード(VBA)をAIに読ませて「何をしているか」を日本語で説明させることができます。以前なら専門業者に解析を頼むしかなかった作業が、社内で着手できるようになりました。まずは解読して仕様書を残すところから始めるのがおすすめです。
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マクロをAIツールに全部置き換えた方がいいですか?
全部置き換える必要はありません。安定して動いていて、中身も分かっているマクロは残す方が合理的なことが多いです。置き換えを検討するのは「壊れたら直せない」「Excelの外(メール・PDF・Webなど)とつなぎたい」「判断を伴う処理をさせたい」ものからで十分です。
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マクロのコードをAIに読ませても情報漏えいは大丈夫ですか?
コードの中に取引先名・単価・パスワードなどが直接書き込まれていることがあるため、読ませる前に中身の確認が必要です。入力データを学習に使わない設定や法人向けプランの利用と合わせて、何を入れてよいかの線引きを先に決めておくと安心です。
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社内にマクロがいくつあるかも把握できていません。何から始めるべきですか?
棚卸しからです。共有フォルダの.xlsmファイルを洗い出し、「業務名・作った人・最終更新・止まったら困る度合い」を一覧にするだけで状況が見えます。この一覧づくり自体もAIに手伝わせることができます。判断はその後で十分です。
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